この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
本件の被相続人は相談者の母親でした。相続人は、長男と長女であり、長男が弊所に案件の対応を依頼されました。本件の遺産は、被相続人が生前生活されていたご自宅(共有持分2分の1)と長女の自宅の共有持分(2分の1)、その他預貯金・保険契約がありました。遺言はありませんでした。本件の遺産のうち、被相続人の自宅は長男と共有、長女の自宅は長女と共有となっており、遺産分割と共有関係も解決する必要がありました。また、預貯金の口座数が多く、預貯金の調査・整理が進まず話し合いが進まなかったことから、長男と長女の関係が悪化し、冷静な話し合いができない状況になっていました。以上の状況で、長女が代理人弁護士を選任したことから、ご長男が弊所に対応を依頼されました。
解決への流れ
以上の状況を踏まえて、弊所で問題点を整理し、以下の通りの対応を提案しました。① 被相続人の自宅(被相続人の持分は2分の1)は長男・長女で共有とした後、売却し、売買代金を分配すること② 長女の自宅(持分2分の1)は長女が代償金を支払って取得すること③ 預貯金は法定相続分で分割すること④ 保険契約は被保険者となっているものが取得すること以上の方針で長女側の代理人と交渉し、不動産の評価で若干意見の調整が必要になりましたが、早期に遺産分割が成立しました。遺産分割成立後、自宅不動産の売却が必要であったため、長女側の代理人とコミュニケーションをとりながら、売買契約から代金決済まで行い、売却を完了しました。また、不動産の売却と並行して、預貯金の解約も行い、売買代金と一括して依頼者である長男に返金いたしました。
本件は遺産の構成がやや複雑であり、また、預貯金数が多いため、事務負担が非常に思い案件でした。遺産分割では各相続人が想定する分割方法にそれほど違いがない場合でも、事務負担が原因で紛糾することがあります。本件は事務負担と相続人間の関係が悪いことが相まって紛争化してしまったと言えます。この点で、長男・長女双方に代理人がついたことで、手続が円滑に進むようになりました。また、被相続人の自宅不動産の売却は、仲介業者選定、境界確定、相続登記、不動産登記の決済等の手続を長男・長女がそれぞれ関与して行う必要があるため、事務処理が非常に煩雑になります。紛争案件において、このような一連の手続を処理することができたのも、長男・長女双方に代理人がついたことによるものと思われます。本件は遺産分割そのものよりも、その後の分割した遺産を換価する作業が非常に煩雑な案件でした。遺産分割に弁護士が関与する場合、紛争の解決=遺産分割の合意取り付けが中心になりますが、実は、合意した遺産分割を実行すること自体が困難なケースも珍しくありません。本件は、遺産分割を実行する場面においても弁護士の関与が有効であることを示す事例として参考になると思われます。本件の詳細は以下の事例紹介をご参照ください。https://www.souzoku-koshigaya.net/jirei/jirei1/post_162.html