この事例の依頼主
60代 男性
ご相談者様は、20年以上前に借入れ、その後、返済が滞ってしまったお借入れについて、借入先金融会社から債権を譲り受けた保証会社から支払い請求を受けていらっしゃるという状況でした。また、当該保証会社は弁護士に依頼をしており、ご相談者様に対する請求は弁護士名で届いていました。そのような中、ご相談者様は「時効の援用」をお知りになり、これによって当該債務が消滅するか否か、ご相談にみえられました。時効の援用のご相談においては、その場で債務が消滅することを確約することはできないことがほとんどです。しかしながら、お借入れからご相談時までの状況を細かにお伺いできれば、ある程度の見通しはつけられると思います。本件においても、お借入れからご相談時までの状況をお伺いし、時効の援用により、債務が消滅する可能性が高いという見通しを持ちました。その場合でも、時効の援用手続は弁護士等に依頼しないとできないわけではありません。ある程度の手段方法をお伝えし、ご自身で手続きを行っていただくこともあります。本件においても、その旨お伝えをしましたが、ご相談者様においては、依頼をして代理人として手続きしてほしいとのことでしたので、弊所で受任し、手続を代理することとしました。
時効援用の手続きを行う場合、相手方金融会社(またはその委任する弁護士)に対して通知を行うことろから始めます。最もシンプルなケースでは、当事者間で交わす書面は当該通知書だけ、ということもありえます。そこで、通知書に何を記載するかが問題となるわけですが(そしてここが一番ミスが多いところだと思います。)、本件においては、ご相談者様が懸念されていらっしゃることがありました。それは、現在使用しているカードを引き続き使用できるのか、ということでした。ご相談者様は、ご依頼をいただいたお借入れ先からの借入れが20年以上も前だったからなのか、数年前にクレジットカードの審査を申し込んだところ、審査に通り、以後、クレジットカードを使用していらっしゃいました。20年ほど前は収入が安定せず、返済が滞ったこともありましたが、現在はクレジットカードを使用するにしても計画的に使用ができているということで、ただ、その利便性からクレジットカードの使用を継続したいというご希望でした。もし、時効の援用を弁護士がご依頼することでご依頼者様の信用情報が毀損してしまえば、上記のご依頼者様のご希望を叶えることはできません。この点にも注意する必要がありました。ご依頼にあたって上記のとおりご説明をさせていただき、ご相談者様は、ご納得の上でご依頼をいただきました。その後、相手方弁護士とご依頼者様の債務は時効により消滅していること等を確認しました。以後、ご相談者様は継続してクレジットカードを使用できていらっしゃるようで、信用毀損も防ぐことができたと思われます。
俗に「ブラックリスト」などと言われるいわゆる信用情報はその仕組が複雑で、その複雑な仕組みを知っているがゆえにできる対処というものもあります。時効の援用といっても様々であり、ただ、請求から免れるために債務を消滅させたいというご希望から、本件のように信用毀損を防ぎたい、というご希望がある方もいらっしゃいます。もちろん、ご相談をいただいてもお力になれないこともあるかもしれませんが、「信用情報の話だから、どうせ弁護士に依頼してもだめだろう」、「相手には弁護士がついているし、こっちが弁護士に依頼しても払わないといけないだろう」と思ってご相談すらいただかないとお力になることはできません。私は、できないものはできないと申しあげますが、できないことをご相談いただいたことに対しては何らそれに対してご意見申し上げることはありません。ぜひ、「こんなこと弁護士に相談しても」などと思われずに、ご相談ください。