この事例の依頼主
60代 女性
相談前の状況
母、父が3か月の間に相次いで死亡。二人合わせて預貯金合計8000万円強、その他不動産が遺産として残された。相続人(4名)の同意のもとに長男が預貯金を解約し管理をしていた。その後、長男から、家屋解体費や今後の墓の管理等で2000万円程度の費用がかかるので、それを差し引いた金額を法定相続分どおりで分割するという提案があり、これに納得がいかない相続人2名が相談に来る。
解決への流れ
早速代理人に就任し、長男に対して財産の内訳、費用の内訳を開示するよう要求。長男も弁護士を依頼。代理人間で遺産の範囲について明らかにできたが、すでに長男は自分の子どもたちのために多額の現金を引き出していることが発覚。それにもかかわらず費用については余りにも法外な要求を維持するため、交渉を打ち切り、当方から遺産分割の調停を申し立てる。調停では、法外な祭祀承継の費用を控除すべきと長男はなお要求したが、当方が若干の譲歩を示し、調停成立。当然、長男の具体的取り分は、すでに長男が私用に引き出した金額を差し引いた金額となった。
不動産を含めると1億円近い遺産の事件で、依頼を受けてから調停成立まで1年半で解決。これだけの金額でこの期間で解決できたことは、とかく時間がかかる遺産分割事件では珍しいケースだと思われます。その意味で依頼者が長男の提案がおかしいと思われてすぐに私のもとに相談に来られたのは正解でした。なお、被相続人は札幌家庭裁判所の管轄外の地方に住んでいたこと、相続人のうちの一人は北海道外に住んでいたので、予め調停申立前に同人から管轄を札幌家庭裁判所とすることについて同意を得て調停申立をしました。