この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
所長代理として、月々30万円の固定給与のみの支払いを受けるのみで、上記時間外労働等に対する賃金については全く支払いを受けていません。雇主からは、「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)として労働時間等に関する規定の適用除外に当たるとの反論が想定されるところです。でも、給与明細上では、基本給、職務給、住宅手当、等多数の項目に分類されて支給されています。また、役付手当もあります。勤務時間は極めてハードで、退職を考えていますが、時間外手当や休日手当などを請求できるでしょうか。
解決への流れ
労働審判を申し立て、当方の主張が認められ、数百万円の未払い賃金の支払を命じる労働審判が下されました。
■「監督若しくは管理の地位にある者」が時間外手当支給の対象外とされるのは、その者が、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ない者といえるような重要な職務と権限を付与され、また、それゆえに賃金の待遇及びその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられている限り、厳格な労働時間等の規制をしなくてもその保護に欠けるところがないという趣旨に出たものと解される。そのため、「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するといえるためには、その役職の名称だけでなく、実質的に以上のような法の趣旨が充足する立場にあると認められるものでなければならない(東京高判平成17年3月30日、労判905・72)■「監督若しくは管理の地位にある者」に当たるといえるためには、①職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか、②その勤務態様が労働時間に対する規制になじまないものであるか否か、③給与(基本給、役付手当等)及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がなされているか否かなどから判断すべきである(東京地判平成20年1月28日、労判953・10)以上の判例の立場を前提に相談事例が、労働基準法の保護の範囲外かどうかを検討することが大事です。そのためには、どのような労働環境にあったのかを証明する資料を保存しておくことが大切でしょう。タイムカードがなければ自分で詳細な労働実態メモを作る、時刻の刻印されるような領収書を保存する、あるいは、チケット予約の記録を保存する等、自分の身を守る手段が大事となります。解決方法としては、労働審判が簡便で迅速な手続です。おおよそ3回の期日程度で結論が出されます。