この事例の依頼主
50代 女性
相談前の状況
ご相談者は,ご自身で離婚調停を申し立てていました。初回の調停期日で,ご自身の言い分を調停委員に一生懸命伝えたのですが,調停委員の反応が今ひとつで,夫の肩を持っているようにしか思えないというご不満を持ち,相談にいらっしゃいました。特にご不満を持っていらっしゃったのが,ご自身の名義の預金を,財産分与として夫に分けなければならないと調停委員から説明されたことでした。老後のことを考え,ご相談者は,預金を確保しておきたいと強く願っていました。
解決への流れ
ご事情を伺ってみると,ご相談者の預金の大部分は,数年前に亡くなったお父様から相続したものでした。相続によって得た財産は,離婚時の財産分与の対象にならない(夫婦の共有財産として取り扱われず,ご自身の財産として確保できる)ものですので,まずそのことをご説明しました。相続によって得た財産であることを理解してもらうために裁判所に提出すべき資料についてアドバイスをしたところ,資料の整理や提出から助力してもらいたいとのことでしたので,ご依頼を受け,2回目の調停から同席をしました。調停に資料を提出し,相続財産であることを理解してもらうことができたため,ご希望どおりにご自身の預金を夫に分けることなく,離婚をすることができました。
「調停委員が自分の言い分を聞いてくれない」「調停委員が相手の味方になっているように感じる」というご不満は,ご相談時によく伺うものです。調停委員は,中立の立場で,一方当事者から聞き取った事情を他方当事者に伝えるという役割を担っていますから,調停委員の伝え方によっては,そのような印象を持つこともあるだろうと思います。私は,そのような時に大切なのは,言い分の整理と,言い分を伝える資料を提出することだと考えています。調停の基本は「話し合い」ですから,多すぎる資料は禁物で,いかにコンパクトで効果的な資料を準備するかが腕の見せ所となります。今回のケースでも,相続によって得た財産であることが分かる必要最低限の資料を提出し,すぐに理解を得ることができました。なお,このケースでは,ご相談時には年金分割の請求をまだしていらっしゃらなかったので,調停に年金分割の請求を途中から付け加えました。離婚時に年金分割まで解決することができ,ご依頼者に喜んでいただくことができました。