この事例の依頼主
70代 男性
相談前の状況
株式会社形態はとっているものの、実際は、創設者である相談者の個人経営であったことから、創設者の死去に伴う会社の経営支配権の争奪が、相続紛争として起こらないようにするには、どうすればよいのか悩んでいた状態でした。将来、長男に会社経営を任せることを希望しているが、後妻や後妻との間に生まれた子である次男も会社経営に関与しているため、円満解決の方法が思い浮かばず困惑しておられました。
解決への流れ
相談者から長男に対する株式譲渡を、有償でする場合と無償でする場合に分け、それぞれの税金額を比較検討したり、株式の価値が相談者の資産全体に占める割合を考慮しながら、共同相続人となるであろう後妻、次男の遺留分額を計算し、相談者から長男にどの程度の株式を譲渡できるかを検討してみてはどうですかと助言しました。結局、相談者の保有している株式価値が比較的低廉である反面、相談者が、まとまった個人資産を保有しておられたので、難なく長男への株式移転ができました。
会社の規模が小さく、種類株式発行会社でなく株式も単一であったことに加え、株式の価値もさして大きくない反面、相談者がかなりの個人資産を有しておられたので、大きな紛争となることなく、長男に対する株式移転ができました。この事例とは異なり、会社の規模がそれ相応のものであった場合や、経営陣が身内であっても、創設者の兄弟や叔父など他の親類縁者がかかわっている場合などには、すんなりと企業承継のスキームが立てられないということもあります。相談案件ごとに、会社の規模や株主の数ないし株式の保有割合などの会社の支配関係、経営について発言権を持っている人物が誰なのか等々。詳細に吟味することが必要となってきます。