この事例の依頼主
女性
相談前の状況
離婚したいが、夫の財産内容がわからないし、夫は多分嘘をつくので財産分け(財産分与)の話がうまくできるか不安という奥様からの相談でした。相談者様からのご依頼を頂き、離婚調停を申立て、その後、離婚訴訟を提起しました。証拠がなければ、「夫には財産があるはず」といくら妻が一生懸命訴えても裁判官は味方になってはくれません(悲しい話ですが、これが現実です)。そのため、家庭裁判所を通じての問い合わせ手続(調査嘱託)をとることを視野に入れて、事件をお引き受けました。
解決への流れ
夫が嘘をついているかはさておき、少なくとも離婚訴訟の中でも、夫は財産の内容を妻側に明らかにすることには協力的ではありませんでした。私は夫の協力には期待できなと判断し、銀行、生命保険会社などに対して、家庭裁判所を通じての問い合わせ(「調査嘱託の申立て」)を徹底的に行いました。そうしたところ、まず銀行からは夫の預金残高はもちろん、夫の取引に関する銀行の記録(取引履歴)の開示を受けることができました。また、生命保険会社からは夫の生命保険の解約時に戻ってくるお金(解約返戻金)の金額について回答を受けました。さらに、そのほかにも問い合わせを行った先(調査嘱託先)から回答を受けることができました。そして、調査によって判明した夫の財産内容をもとに、財産分与に関する主張を行いました。調査嘱託という根拠がある主張ですので、担当裁判官も相談者様側(妻側)に好意的だった印象です。その後、夫とは裁判所の和解手続で離婚をし、相談者に有利と思われる内容での財産分与を実現できました。
夫が財産の内容を妻に対して明らかにしてこないケースは、少なくはありません。このような場合、家庭裁判所を通じて調査を行うこと(調査嘱託)を一つの「武器」として、適正妥当な財産分与の実現を目指す必要があります。