犯罪・刑事事件の解決事例
#給料・残業代請求

外回り営業マンの未払残業代請求事件~事業場外みなし労働時間制が争われた事例~

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徳田 隆裕 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人金沢合同法律事務所
所在地石川県 金沢市

この事例の依頼主

30代 男性

相談前の状況

クライアントは,イベント運営会社の外回りの営業マンでした。労働時間が長いわりに,給料が安く,残業代が支払われていないことから,会社を退職するタイミングで未払残業代の請求をしたいというご相談でした。会社に在職しているときに,未払残業代請求をすると,会社から嫌がらせを受けたり,干されたりするリスクがあることから,在職中に未払残業代請求をするケースは少ないですが,退職するタイミングであれば,会社との縁が切れる絶好のタイミングなので,会社に一矢報いるために,未払残業代請求をするケースは多いです。

解決への流れ

未払残業代請求事件では,まず,時効を中断させます。未払残業代請求権は,2年の時効で消滅しますので,早く請求する必要があるのです。例えば,2019年10月から2年前の2017年10月の未払残業代請求権は,2019年11月になると,時効で消滅してしまいます。そのため,時効を中断するために,配達証明付内容証明郵便で,会社に対して,未払残業代請求をします。この請求書が会社に届いてから,6ヶ月以内に裁判手続をおこなえば,時効は中断されることになります。そして,請求書には,あわせて,タイムカードや就業規則を開示するように記載します。労働者は,タイムカードや就業規則のコピーを準備していることはあまりないので,会社に開示を求めます。弁護士が代理人として,タイムカードや就業規則の開示を求めれば,ほとんどの会社は,開示に応じてきます。この事件では,相手方の会社にも弁護士がついて,タイムカードや就業規則の開示に素直に応じてくれました。開示されたタイムカードには,打刻漏れがあったのですが,仕事用のメールの送信時刻を参考にして,タイムカードの打刻漏れを補充しました。タイムカードが正確に打刻されていない場合には,メールの送信時刻やグーグルカレンダーの記録などの証拠で,何時まで働いたのかを補充していきます。

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徳田 隆裕 弁護士からのコメント

就業規則には,1ヶ月単位の変形労働時間制の記載があり,相手方会社は,1ヶ月単位の変形労働時間制を採用しているので,当方の計算した未払残業代の支払には応じないと主張してきました。1ヶ月単位の変形労働時間制とは,1ヶ月の期間につき,1週間当たりの平均所定労働時間が40時間を超えない範囲で,1日8時間を超えて労働させることができる制度です。会社は,1日8時間,1週間40時間を超えて,労働者を労働させた場合には,残業代を支払わないといけないのですが,1週間のうち,ある日は9時間働かせて,ある日は7時間働かせて,1週間で40時間を超えていなければ,残業代を支払わなくてよくなるのです。もっとも,変形労働時間制が有効になるための要件は厳しく,1ヶ月の期間の各週,各日の所定労働時間を就業規則で特定する必要があります。そして,シフト表で労働時間を管理している場合には,就業規則に,各勤務の始業・終業時刻及び各勤務の組合せの考え方,シフト表の作成手続や周知方法などを定め,各日のシフト表は,それに従って,具体的に特定されなければならないのです。相手方会社は,就業規則において,シフト表の各勤務の始業・終業時刻,各勤務の組合せの考え方,作成手続や周知方法を全く記載していませんでした。そのため,1ヶ月単位の変形労働時間制は無効となります。また,相手方の就業規則には,事業場外みなし労働時間制の規定がありました。事業場外みなし労働時間制とは,会社の外で働く労働者の労働時間を把握することが困難なときに,実際の労働時間とは関係なく,みなし時間だけ労働したとみなされてしまう制度です。例えば,みなし時間が8時間の場合,実際に11時間労働しても,8時間だけ労働したものとみなされて,3時間分の残業代を請求できなくなるのです。もっとも,事業場外みなし労働時間制は,「労働時間を算定し難いとき」にのみ有効となるところ,相手方会社は,グーグルカレンダーや会社が貸与していた携帯電話のグーグルのタイムラインの記録で,クライアントの労働時間を正確に把握していましたので,事業場外みなし労働時間制は適用されませんでした。結果として,相手方会社は,クライアントが主張する未払残業代請求を認めてくれました。ただ,クライアントは,会社から借りていたアパートの原状回復費用を負担しなければならず,原状回復費用分が未払残業代から控除されてしまいました。外回りの営業マンの場合,会社から,事業場外みなし労働時間制の反論がされる可能性がありますが,通信機器が発達した現代において,労働時間を算定することが困難な場合は限定されるはずです。未払残業代請求をする際には,弁護士に相談するようにしてください。