この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
クライアントは,退職した会社に対して,ご自身で残業代を計算して,未払残業代を請求しましたが,会社からは,残業代の一部が支払われただけで,満額にはほど遠い状態でした。また,会社が離職票を発行しなかったために,クライアントの失業給付の受給が遅れたり,再就職が遅れたりしたため,損害が発生していました。そこで,未払残業代請求と損害賠償請求の訴訟を提起しました。
解決への流れ
タイムカードがなかったのですが,クライアントは,毎日の業務の際に,ご自身の仕事内容を時間とともに記録していたので,クライアントが作成した日報をもとに,労働時間を特定して,残業代を計算しました。会社は,クライアントに専門業務型裁量労働制が適用されることと,クライアントが仕事をせずにさぼっていた,クライアントの仕事内容からしてこんなに時間がかかるはずがないと主張して,クライアントが主張している労働時間のうちの一部しか労働時間とは認めないとして争ってきました。
まず,専門業務型裁量労働制については,会社は,全く労働基準法の要件を満たしていないので,クライアントには,裁量労働制は適用されません。次に,労働時間ですが,クライアントは研究職であり,研究に時間がかかっていたこと,上司からの突発的な指示に対応しなければいけなかったこと,研究所にはクライアント以外に労働者はおらず,クライアントが事務作業全般をしていたことから,長時間労働になっていたと主張しました。また,クライアントは,会社に対して,毎日,自分で作成した日報をメールで送信していたので,会社は,クライアントの仕事内容を把握していたはずなのに,何もしていなかったので,黙示の指揮命令があったと主張しました。裁判所は,当方の主張を理解してくれて,当方が主張していた未払残業代の元金にほぼ近い金額で和解が成立しました。タイムカードがなくても,労働者がこまめに労働時間をメモしていれば,そのメモで労働時間を証明できる可能性があります。また,会社から,さぼっていただろうという主張がされることがるので,自分のした仕事内容もあわせてメモしておくといいでしょう。タイムカード以外の証拠で労働時間を証明できることがありますので,残業代を請求したい場合には,ぜひ弁護士にご相談することをおすすめします。