ジャーナリストのたかまつななさんが8月17日、自身のSNSで事実婚を発表しました。
たかまつさんは事実婚を選んだ理由について、「生まれてきてからずっと使い続けてきた名前を大切にしたい。 人生で一番ぐらい幸せな時のはずなのに、 どちらかが我慢し、寂しい思いをするのに違和感を持ち、そのようにしました」と説明しています。
近年、結婚の形は多様化しており、「事実婚」という選択肢を選ぶカップルが増えています。しかし、「入籍しない結婚」と漠然と理解していても、法的な意味や手続き、そして注意すべき点について正確に把握している方は少ないかもしれません。
事実婚は婚姻届を提出する法律婚と比べ、デメリットはないのでしょうか。
●事実婚とは何か?
事実婚とは、婚姻届を提出せず、夫婦としての共同生活を送る男女の関係を指します。法律上は「内縁関係」とも呼ばれます。
単なる同棲とは異なり、事実婚と認められるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
婚姻の意思があること: 夫婦として共同生活を営む明確な意思があるかどうかが重要です。
夫婦としての共同生活があること:同居し、家計を共にするなど、客観的に夫婦と見なされる生活実態があることが必要です。
これらの要件を満たしていれば、法律上の婚姻関係ではないものの、一部の法律において保護の対象となります。たとえば、不当な関係解消に対しては内縁の妻(夫)として慰謝料を請求できる場合があります。
●事実婚をするための法的手続き
事実婚に法的な手続きは必要ありません。ただし、公的な証明を行うことで、様々なメリットを享受できます。
住民票: 住民票の続柄を「妻(未届)」「夫(未届)」として登録することが可能です。これにより、公的な書類で夫婦関係を証明でき、医療機関や行政サービスなどで役立つ場合があります。
公正証書:「事実婚契約公正証書」を作成することで、以下のような取り決めを法的に証明し、トラブルを予防できます。
・生活費の分担
・財産の管理
・子どもが生まれた場合の認知に関する取り決め
・万が一の関係解消時の財産分与や慰謝料
公正証書は公証役場で作成し、強い証明力を持つため、事実婚を検討する上で最も有効な手段と言えるでしょう。
●事実婚のデメリットと対策
事実婚には自由さがある一方で、法律婚では当然に得られる権利や保護がないというデメリットも存在します。ここでは、特に注意すべき3つのデメリットとその対策を解説します。
<デメリット①:相続権がない> 法律上の配偶者ではないため、パートナーが亡くなった場合、原則として相続権がありません。長年築き上げた財産であっても、法定相続人(子どもや両親など)が優先され、遺族としての生活基盤を失うリスクがあります。
対策:
遺言書の作成: パートナーに財産を遺したい場合は、遺言書を書いてもらうことが不可欠です。
生前贈与:生きているうちに財産を贈与しておく方法もありますが、贈与税に注意が必要です。
<デメリット②:子どもの親権や姓の問題>
事実婚で生まれた子どもは、法律上、非嫡出子となります。戸籍上の父と母は別々となり、姓は原則として母親の姓を名乗ります。
また、非嫡出子の親権は母親が単独で行使します。父親が親権を持つには、家庭裁判所への申し立てが必要です。
対策:
父親の認知:父親が子どもを自分の子であると認める「認知」の手続きを行うことで、親子関係が法的に成立し、父親からの扶養義務や相続権が発生します。
公正証書の作成:子どもの養育費などについて、公正証書で取り決めておくことがトラブル予防になります。
<デメリット③:公的な保障がない>
事実婚では、法律上の配偶者が得られる社会的な保障の一部が受けられません。
配偶者控除:年末調整や確定申告における配偶者控除が適用されません。
●まとめ
事実婚は、自由な関係性を築くことができる魅力的な選択肢です。しかし、法律婚とは異なるリスクがあることを理解し、公正証書の作成や遺言書の準備など、事前にしっかりと対策を講じることが何よりも重要です。