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「チノパン」事故に類似する事故を起こしてしまった場合、逮捕は拒めるのか
2013年01月10日 19時04分

元フジテレビのアナウンサーであり、「チノパン」の愛称で親しまれていたフリーアナウンサーの横手(旧姓千野)志麻さんが今月2日に静岡県沼津市の駐車場で起こした死亡事故について、沼津署は横手さんを書類送検する方針を固めたと報じられている。

一方、別件の報道では、今月5日に神奈川県相模原市で無職の女性が駐車場で車をバックさせた際に女性をひいた死亡事故が起きたが、この事故では運転していた女性は現行犯逮捕されたようだ。

それぞれの事故の詳しい状況は不明だが、事故現場が駐車場であったこと、容疑が自動車運転過失致死であることなど、あくまで報じられている内容だけを見れば類似した事故であるようにも思える。しかし、前者の事故では加害者は書類送検、後者の事故では現行犯逮捕と、警察の対応は異なっているのだ。

逮捕=有罪確定、ではないが、逮捕されれば身柄が拘束されることになるので、逮捕されずにすむならそれにこしたことはないと思うのが一般的な感覚だろう。

それでは、もし我々が横手さんの事故と類似するような事故を起こしてしまった場合に、横手さんは逮捕されなかったことを例にして警察の逮捕を拒むことはできるのだろうか。大久保誠弁護士に聞いた。

●逮捕するには「逮捕の必要性」が求められる

「現行犯逮捕については、『現行犯人は、何人でも、逮捕状なくして之を逮捕することができる』と刑事訴訟法に規定されています(213条)。一方、通常逮捕の場合、裁判官は「明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りではない」として逮捕状を発することができません(同法199条2項但し書き)。しかし現行犯逮捕の場合も、条文の文言上はこのような逮捕の必要性という要件がありませんが、やはり逮捕の必要性が要件となるのが判例です。」

●逃亡のおそれや罪障隠滅のおそれ等がなければ逮捕されないこともある

「逮捕の必要性とは、逃亡のおそれまたは罪障隠滅のおそれがある等のため身体の拘束が相当であることをいい、しかもそれは必ず満たされていなければならない条件ではないとされています。横手さんの場合は、著名人ということや事故時の状況から逃亡や罪障隠滅のおそれがおよそないと捜査機関が判断したのでしょう。横手さんが逮捕されなかったことは何ら法的に問題はありません。」

●類似する事故を起こした場合でも、人によって逮捕される場合とされない場合がある

「では、我々が同じような事故を起こしたとして横手さんの例を挙げて逮捕を拒めるかといえば、結局のところ、事故を起こした人の職業等や状況からおよそ逃亡や罪障隠滅のおそれがないと捜査機関が判断できるか否かに関わるので、逮捕される場合もあればされない場合もあるとしか言えません。」

つまり、もし我々が横手さんの事故と類似するような事故を起こしてしまった場合でも、横手さんと同様に逮捕されない可能性もある一方で、警察が逮捕すると判断した場合には、横手さんの例を挙げても逮捕を拒むのは難しいということだ。

●逮捕されなかったからといって、必ずしも逮捕された場合よりも刑罰が軽くなるわけではない

ちなみに、一部の報道では横手さんの事故について50万円程度の罰金刑を予想する声もあるようだが、大久保弁護士の見解では「対人無制限の任意保険に加入していて、保険金が支払われることが間違いない場合であれば、前科がない限り執行猶予相当の案件ですので、最大で懲役3年、執行猶予3年程度でしょうか。」ということだ。

今回横手さんが逮捕されなかったことについて、「著名人だから優遇されたのでは」といった声もあるようだが、逮捕されなかったからといって必ずしも逮捕された場合よりも科される刑罰が軽くなるということではないので、この点は誤解しないよう注意が必要である。

(弁護士ドットコムニュース)

元フジテレビのアナウンサーであり、「チノパン」の愛称で親しまれていたフリーアナウンサーの横手(旧姓千野)志麻さんが今月2日に静岡県沼津市の駐車場で起こした死亡事故について、沼津署は横手さんを書類送検する方針を固めたと報じられている。

一方、別件の報道では、今月5日に神奈川県相模原市で無職の女性が駐車場で車をバックさせた際に女性をひいた死亡事故が起きたが、この事故では運転していた女性は現行犯逮捕されたようだ。

それぞれの事故の詳しい状況は不明だが、事故現場が駐車場であったこと、容疑が自動車運転過失致死であることなど、あくまで報じられている内容だけを見れば類似した事故であるようにも思える。しかし、前者の事故では加害者は書類送検、後者の事故では現行犯逮捕と、警察の対応は異なっているのだ。

逮捕=有罪確定、ではないが、逮捕されれば身柄が拘束されることになるので、逮捕されずにすむならそれにこしたことはないと思うのが一般的な感覚だろう。

それでは、もし我々が横手さんの事故と類似するような事故を起こしてしまった場合に、横手さんは逮捕されなかったことを例にして警察の逮捕を拒むことはできるのだろうか。大久保誠弁護士に聞いた。

●逮捕するには「逮捕の必要性」が求められる

「現行犯逮捕については、『現行犯人は、何人でも、逮捕状なくして之を逮捕することができる』と刑事訴訟法に規定されています(213条)。一方、通常逮捕の場合、裁判官は「明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りではない」として逮捕状を発することができません(同法199条2項但し書き)。しかし現行犯逮捕の場合も、条文の文言上はこのような逮捕の必要性という要件がありませんが、やはり逮捕の必要性が要件となるのが判例です。」

●逃亡のおそれや罪障隠滅のおそれ等がなければ逮捕されないこともある

「逮捕の必要性とは、逃亡のおそれまたは罪障隠滅のおそれがある等のため身体の拘束が相当であることをいい、しかもそれは必ず満たされていなければならない条件ではないとされています。横手さんの場合は、著名人ということや事故時の状況から逃亡や罪障隠滅のおそれがおよそないと捜査機関が判断したのでしょう。横手さんが逮捕されなかったことは何ら法的に問題はありません。」

●類似する事故を起こした場合でも、人によって逮捕される場合とされない場合がある

「では、我々が同じような事故を起こしたとして横手さんの例を挙げて逮捕を拒めるかといえば、結局のところ、事故を起こした人の職業等や状況からおよそ逃亡や罪障隠滅のおそれがないと捜査機関が判断できるか否かに関わるので、逮捕される場合もあればされない場合もあるとしか言えません。」

つまり、もし我々が横手さんの事故と類似するような事故を起こしてしまった場合でも、横手さんと同様に逮捕されない可能性もある一方で、警察が逮捕すると判断した場合には、横手さんの例を挙げても逮捕を拒むのは難しいということだ。

●逮捕されなかったからといって、必ずしも逮捕された場合よりも刑罰が軽くなるわけではない

ちなみに、一部の報道では横手さんの事故について50万円程度の罰金刑を予想する声もあるようだが、大久保弁護士の見解では「対人無制限の任意保険に加入していて、保険金が支払われることが間違いない場合であれば、前科がない限り執行猶予相当の案件ですので、最大で懲役3年、執行猶予3年程度でしょうか。」ということだ。

今回横手さんが逮捕されなかったことについて、「著名人だから優遇されたのでは」といった声もあるようだが、逮捕されなかったからといって必ずしも逮捕された場合よりも科される刑罰が軽くなるということではないので、この点は誤解しないよう注意が必要である。

(弁護士ドットコムニュース)

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